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いつの頃からか都市は黒い雲で覆われていた。
地上に異端の者が蔓延るようになってどの位の刻が経ったのか。今では太陽の光が大地に射う日も少ない。
その僅かな、その恩恵を受けるべき生き物も今はいない。
今、その地を支配するのは異なる世界の生き物ばかりだった――
廃墟のひとつが土煙を上げて崩れていく。
その下を薄汚れた銀の甲冑に身を固めた戦士たちが進軍を続けていた。廃墟の街をを移動してい数は数千を超え
ている。遥か上の建物から見下ろすその集団はまるで蟻の群れだった。
放棄された高層ビルの最上階からそれを見下ろしながら分厚いマントを羽織った雷帝はそう思った。
「ヴァニールどもが。調子好きおって」
そう呟くと雷帝は踵を返して部屋の奥に戻っていった。そこには大きな玉座が置かれており雷帝はマントを翻すと玉
座に座り込んだ。
それを待ち構えていたかのように、玉座の前に敷かれたダークブルーの絨毯の上に数人の人影が浮かび上がって
いく。
「ご報告申し上げます陛下。第一軍団の防衛線が突破されました。あれはそこから洩れ出た者どもでしょう。しかし心
配いりません。後方には第二軍団が控えております。駆逐するには容易いかと」
雷帝は肘を肘掛に乗せると軽く頬杖をついた。
「とはいえ、防衛線を突破されたのは気に入らんな」
「多少の損害はありますが決して致命傷ではありませぬ」
次の瞬間、暗い天井から稲妻の閃光が床に落ちた! 絨毯の上に炎が上がる。側近たちは動揺して顔を見合わ
せた。
「負けぬ戦いなどいらん! 勝つ戦をせよ」
周りを取り巻く側近たちが一斉に畏まった。
「確かにその通りです!」
部屋の隅から声がした。他の側近達がそれに気付き振り向く。光の射さない暗闇の中から姿を現したのは薄ら笑
いを浮かべた若い男だった・。
「だがしかし、こうも戦力が拮抗していれば勝利は困難でしょうな」
そう言う男のまるで海岸を散歩するような気楽な格好は明らかに場違いだった。
「ロキ……誰かと思えば我が愚弟か」
ロキは肩を竦めた。
「それは酷い言い方ですね。兄上」
「貴公には”剣”の回収を命じてあるはずだが?」
「それが中々上手くいきませんで、兄上」
ロキはばつが悪そうに頭を掻いた。
「お前は戦力の拮抗を指摘したがそれを打開できぬのは”剣”をヴァニールの……炎の女王に奪われたからなのを忘
れたか?」
ロキは肩を竦めた。
「こいつは手厳しい。しかしそれはそこ、不幸中の幸いというべきことが……」
「人間に奪われたのであろう」
「あら? ご存知で?」
再び閃光がロキの足元を貫いた。床に大きな穴ができ、その輪郭を炎の輪が出来ている。
「その戯けた口も父の手前生かしておいているの覚えておけ」
「でなければ私もこのようになると?」
「そういう事だ」
ロキは床に跪いた。
「仰せのとおりに。雷帝ソーよ」
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