|
ストライカーズの本部建物から出た有理たちを待ち構えていたのは銃を構えた男達だった。
「なんだ? てめえら……」
同じストライカーのようだが有理たとに敵意剥き出しといった感じだ。
「矢追有理だな?」
男達の中の一人が言った。
「だったらどうだってんだ?」
「その娘を大人しく渡せ」
「何だ?」
有理は銃のグリップに手かけた。それに反応するかのようにり囲んだストライカーズたちは自動小銃を突きつけた。
「ロクさん……」
五月は不安げにロクを見上げている。
「大丈夫です、五月さん。おい、お前ら。物騒な真似はよしとけよ。おかしな事すると俺も黙っちゃいないぜ」
「いえ、用があるのはあなた達ではありません。こいつです」
取り囲む男達の中からひとりの男が前に出た。
「明智か?」
「お久しぶりです、ロックさん」
「お前のチームだったか」
「精鋭チームです。昔のあなたのチームにも劣らないでしょう」
そうにこやかにロクに話しかけた後、有理の方を向いた。
「久しぶりだな有理」
「おいおい、見覚えあるやつがいた。誰かと思ったら西地区の腰抜けじゃないか」
有理は腰抜け呼ばわりしたがストライカーズの中でも有能な隊長の一人だ。明智は有理の言葉に眉間にシワを寄
せた。
「元気だったか? オカマ野郎」
女性的な顔立ちの明智を有理はいつもこの言葉で痛めつける。
「オカマじゃない! 俺を侮辱するな」
明智は苛立った声で言った。
「まったく、ムカつく奴だ。だが今日はそう生意気な態度はさせないからな。この日が来るのを待ってたんだ。お前に
公然と銃を突きつける日をな!」
そう言うと明智はハンドガンを有理に向けた。
「一体何のつもりだ?」
「……大人しくその子を渡してもらおうか」
「なんでお前等がレーヴァを?」
「さあな。ただ警備兵が二人やられてる。ただで済むかよ。さあ、こっちに渡せ」
「俺たちじゃ…」
「有理。女の子は私だ」ロクが有理の肩をこずいた。
「う、うるせーな……私たちじゃない」
「わかってるがその子供には何かある。違うか?」
「渡すと思うか」
「ああ、思うね」
隊長はハンドガンの安全装置を外した。
「お前は渡すさ」
「おいおい、明智。お前、わかってねえーな」
ロクが口を挟んだ。
「ロク。あんたみたいな人が、こんな奴とつるむのか?」
「つるんじゃいねえ。俺はこの五月さんのお供で来ただけだ。俺が言いたいのはお前が判ってないって事なんだよ」
明智は眉をしかめた。
「こいつは力ずくでどーこーってのが……」
明智が目を離した一瞬をついて有理はホルスターからハンドガンを抜くと明智の顔に突きつけた!
「一番キライなんだよ!」有理が怒鳴った。
「ちっ……わかってるのか? 銃の数はこっちの方が多いんだぜ」
「数じゃねーんだよ。何に"ぶち込む"かだ。お前の頭は確実に飛ばす!」
しばらく膠着状態が続いた。合図次第で有理の引き金より早くライフルを撃てるかもしれない。しかし撃てないかも
……明智の部下たちも判断に迷い指揮官の顔をうかがっていた。
「くそが…ロク。あんたはどっち側だ?」
「どっちでもねー。俺は関係ない。だから手も出さない」
「ロクさん…」
五月は小声で言った。
「大丈夫です」ロクは心配そうな五月に片目をつぶってみせた。
「どうする? やる気か?」
有理が挑発した。
「……くそが」
明智はゆっくりと銃を下げた。
「引き上げるぞ」
その号令で明智の部下たちもライフルを下げた。
「おい、有理。また来るからな!」
「いつでもこい」
有理はまだハンドガンを下げなかった。
明智のチームは包囲を解くとその場を離れていった。明智たちの姿が見えなくなった時、ようやく有理もグロック17
を下げた。
「ふう……」
「無茶すんなよ」
「奴らはやれなかったさ」
「アイツを甘く見るなよ。あれでも西地区隊長だぞ」
「別に怖くねーよ。あんなオカマ」
「怖いとかじゃねぇ。油断するなってことだ」
「ふん、えらそうに」
「偉いんだよ。俺は居酒屋"WWE"店長だ」
―客が去った審問室―
「……帰ったようだな」
審問官の前に現われたのは大柄な男だった。甲冑近いプロテクターで身を固めている。顔や腕に刻まれたキズは
彼が戦士であることの証明だった。
「外で二人やられてる。何があった?」
「わかってるだろ? 司令官。ずっと見てたくせに」
審問官は柱に彫刻されていた人の顔を指差した。
「監視カメラのことは君も気付いてただろ。だから肝心な事は聞こえないようにしてた」
「まあな。しかし"妖魔"がこんな所まで入り込んでくるとはな。まったくここの結界ときたらほころびだらけだ。」
「それについては改善させる。警備も強化する。しかしあの子供はなんだ?」
「言えないな」
審問官は膝に置いてあった五月から貰った草団子を手に取った。
「尋問か? ここは私の支配する"審問室"だぞ」
「当然じゃないか。私はこの辺一帯のストライカーズを仕切っている責任者だぞ。つまりここじゃ一番偉い」
「うむ……こいつは最高だな……関係にゃい」
審問官は覆面ごしに草団子を頬張りながら言った。
「審問室は審問室だ。ここへ来てものを訊ねるなら見返りをよこせ」
司令官は腰のナイフを外すと審問官に手渡した。審問官はその柄をじっくり眺めた。
「いい細工だ」
「腕のいい職人に作らせた。一点ものだぞ」
審問官は革製の地図を放り投げた。それを受け取った司令官は広げてみた。
「その赤い光点を追え。それが有理たちの位置だ。あの娘たちを追っていれば、いずれ何が起こっているのかわかる
だろうよ」
帰り道を進む軽バンは行きとは違っていた。
「馬鹿に静かじゃねえか」
大人しい有理に向かってロクが言った。しかし有理の反応は意外なものだった。いつもなら憎まれ口で返す有理が
「たまにはな」の一言で済ませたのだ。
内心驚いていたロクはバックミラー越しに有理の様子を見た。
有理の膝枕でレーヴァが寝息をたてている。
それを優しい表情で見つめる有理の顔は心なしか笑顔だった。
「たまには……か」
軽バンは悪路に揺られながら街に戻って行った。
2、「闇の審問官」 了
|