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"コマンチ"は目標に接近していた。コマンチはステルス性能のあるヘリだ。ジェットの噴出口は熱源が探知しにく
く、騒音は最小限に抑えられている。レーダー波も受けにくい機体は世界で最も高価な戦闘ヘリだった。
しばらくすると森の中に古城が見えてきた。
古城は、四百年ほど前に建てられたものだった。だがこの建造物はハイテクの警備システムと兵器を設置し生まれ
変わり近代要塞化されていた。レーダーも設置されていたが"コマンチ"には通用せず、接近を許してしまった。 城 の住人たちが"コマンチ"に気がついたのは肉眼で見えた時だった。
その時は"コマンチ"の火器の有効距離だ。
ガンナーは対空ミサイルの位置を確認すると誘導ミサイルを発射ボタンを押した。
別窓 | 簡単な吸血
森の向こう側では地元の軍と警察が道路封鎖をしていた。
「なんで、米軍が俺達の国にまででしゃばってくるんだ?」
装甲車は道路の真ん中に停まるとエンジンを切った。
「いや、今、マフィアのアジトを急襲しているのは米軍じゃないらしい」
「じゃあNATO軍か?」
「さあな…でも疾病なんとかの…専門の特別部隊だとさ」
「おい、それってやばいんじゃないのか? もしかしたら細菌兵器ってことか?」
「かもしれない」
「くそったれ」
「ああ、嫌な予感がするぜ」
レーザーロックされた標的に正確にミサイルが突っ込んでいった。
命中した対空ミサイルはオレンジ色の炎を上げて爆発を起こした。
城全体に警報が鳴り響いた。
朝食の最中だったラングレンはここで紅茶を入れたカップを口につけた時、異状に気がついた。
「何事だ?」
インターホンのボタンを押して警備室に呼びかける。
『戦闘ヘリの奇襲です。対空ミサイル設備が破壊されました』
ラングレンは、椅子から立ち上がると窓のカーテンを開けた。
空には黒に近いグリーンの機体が見えた。
「くそっ!」
そう吐き捨てるように言うとラングレンはその場から慌てて立ち去った。
攻撃ヘリ"アパッチ"から次々とロケットが発射された。
"コマンチ"に迎撃兵器をすでに破壊されていた為、城からの反撃はない。古城はただ攻撃を受け続けるだけだっ
た。
ありったけのロケット弾を撃ち込んだアパッチは城の周りを旋回して様子を見ていた。爆発の煙の中、警備らしい男
たちがライフルを向けているのが見える。
勇敢な連中だ…
ガンナーは男達を見てそう思った。
ヘルメットに備え付けられた照準用のディスプレイでは自動的に相手に狙いを定めていく。
ライフルの弾丸がヘリに当たった。しかし装甲の厚いアパッチは銃弾を易々と跳ね返した。
「グッバイ!」
ガンナーはガトリングガンの発射ボタンを押した。目標に向けられたガトリングガンが掃射される。アパッチを狙って
いた男達は数秒で城壁のブロックごと消し飛んでしまった。
「こちら"ファイヤーバード"、邪魔者は一掃した」
アパッチのパイロットはらブラックホークに通信をいれた。
対空火器が沈黙したとみるや林から2機のブラックホークが現われた。
ブラックホークは城の上まで来るとホバーリングを始める。
「こちらアルファ、位置についた」
『了解、アルファ。降下開始せよ』
「了解、降下開始する!」
降下用のロープが垂らされると武装した兵士が降下していった。
兵士たちは着地すると周囲に銃を向け、警戒しながら広がっていった。
ロープをつたい地上に降りた後はニックは周囲を注意深く見渡していた。
上空ではアパッチ攻撃ヘリが援護のために旋回を続けていた。
ここには敵はもういない……
外の敵はすべて攻撃ヘリが片付けてくれたようだ。今の時点、ニックたちの行く手を阻む者たちはいそうにない。
隊長は城への出入り口を発見すると一番近くにいたニックとファーガスンに合図した
ニックとファーガスンはMP5を構えてドアに向かう。背後にサポートの隊員が二人ついてきた。
ファーガスンが鉄の扉に手をかける。
「鍵がかかってます」
予想していたことだ。体長の指示で爆破担当の兵士が駆け寄ってきた。彼は手際よく鍵穴付近にプラスチック火薬を
取り付けた。
「下がって」
隊員たちは2、3メートルほど下がった。合図で爆破スイッチを入れると勢いでドアが開いた。
壊れたドアをけり破るとファーガスンは先頭を切って内部に潜入した。
城の中は思いのほか明るかった。足元もしっかり見えるほどに照明は充実している。多分、使用人たちが仕事をしや
すくする為だろう。なぜなら城の主には、そんなものは必要ない。
階段を下りて広い部屋に出ると背広を着た誰かが見えた。
ファーガスンはMP5を構えた。
「ま、まて!」
男は部隊に気づくと手を上げて降伏の意思を示した。
ファーガスンが勢いよく男を壁に押し付けた。横からニックが男の頭に銃口を突きつける。
「”主”はどこだ?」
「”主”?」
「おまえらの雇い主だよ!」
「俺はきたばかりでよく知らない」
ファーガスンは男の横腹にパンチを叩き込む。
苦悶して身体を曲げた後男は何かを言った。
耳を近づけるファーガスン。
「知らないんだ…本当に…」
「こいつ」
ハンドガンを抜くと男の左ひざに当てた。
「よせ!」
ニックはファーガスンを制止した。
「ニックの言うとおりだ。先に進もう」
尋問を続けたそうなファーガスンは隊長の言葉に渋々従った。
部隊は男の手足をプラスチック製の簡易手錠で縛り上げるとその場に転がした。
「こんな手間をかけていくなんて非効率だ…」
「彼らは”主”じゃない。やたら殺していいてもんでもないぞ」
「” 主”に協力する人間なんてクソだ!」
「ファーガスン、 落ち着け!」
ニックはファーガスンを睨みつけた。
城の中にはすでに別の部隊も進入していた。今回の作戦には3チームが投入された。ニックのいるアルファチーム。
一階から突入したブラボーチーム。サポートとして城の外で待機中のチャーリーチーム。
彼らは見取り図を渡されていて目標まで着実に近づいていた。
先に目標に近づいたのはブラボーチームだった。
『こちらブラボーチーム。”門”についた。これより進入を開始する』
「了解、ブラボー。気をつけろ」
ニックたちアルファチームは”使用人”たちの抵抗を受け途中、銃撃戦になっていた。”門”の到着はまだ時間が掛か
りそうだ。先にここを制圧しなくてはならない。
隊長は多少苛立った。
先に到着したブラボーチームの前に巨大な金属製のドアが立ちふさがっていた。
これが”門”だ。
銀行の金庫並みの厚さの金属のドアで多少のことでは開きそうもない。
その先には目標である城の”主”がいる。
隊員の一人が暗証ボタンのカバーを外すと携帯コンピューターの端末につなげた。
「弾倉の交換だ」指揮官が部下に指示を出した。
ブラボーチームはMP-5のカートリッジを十字マークのはいったものと交換していった後、バッグから赤外線ゴーグルを
取り出し装着し始めた。
高感度カメラの赤いレンズが次々と点灯する。
「ビンゴ!」
携帯コンピューターがドアの暗証番号を見つけ出した。小さなアラーム音がすると同時に重量級の金属のドアがゆっ
くりと開いていく。
ドアの先を覗き込むと、そこはライトもついてない闇の世界だった。
「いくぞ!」
ブラボーチームの隊員たちは深い闇の中に進入していった。
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