|
「吸血鬼ぃ?」
驚く有理にロクは頷く。
「でもって殺し屋だ。厄介だろ? ターゲットには花を贈るって話だ。洒落てるが悪趣味だな」
「あたしも白い百合を渡された」
「よかったじゃねーか。お前にも"死のプロポーズ"ってわけだ」
「笑えネーよ……でも、あいつって吸血鬼なんだろ? 襲撃は昼間だったぜ。なんで平気んだよ。吸血鬼ってのは陽
の光ってダメじゃん」
「よく理由はわからんが吸血鬼の突然変異って噂だ。だから昼間、太陽の光に当たっても平気なのさ。デイウォーカ
ーってやつだな。ただ十字架は苦手らしい。」
「よくわかんねえな」
「一説には普通の人間だったころの罪悪感とかが十字架を恐怖する理由らしい。ただ嫌うだけで灰になるわけでない
みたいだが」
「妖魔どもが"聖弾"で灰になるのとは違うんだな……」
「半分人間みたいなもんだからな」
「で、なんでその吸血鬼が、あたしを狙うってんだよ」
「奴の本業は殺し屋だからな。誰かの依頼だろ? おまえ、誰かに恨み買ってない?」
「恨みを買う……」
有理はロクの顔をじっと見た。
「なんでおれだ!」
「だって……ご飯食べさしてくんないじゃん」
「なら十字架で助けるかよ!」
「それもそうだな! アハハ」
「"アハハ"じゃねーよ。まったく……」
五月が湯飲みにお茶をついで運んできた。
「あっ、すみません」
恐縮するロク。
「サンキューね。五月さん」
二人は湯のみをとった。有理の横に座ったリーヴァもお茶を取ろうとしたが届かない。
「はいよ、リーヴァ」
有理はリーヴァにお茶をとってやった。うれしそうに湯のみをとるリーヴァ。
「……あと、心当たりといえば明智のオカマやろうかなぁ」
有理は思い出したように言った。
「いや、あれでもスレイヤーズの端くれだ。その気だったら自分で手を下すだろう。それよりお前、明智となんかあった
の?」
「別にぃ……いいじゃねーかよ」
少し焦った有理は、お茶をぐいっと飲み干した。
「もしかしたら……」
五月が思い出したように言い出した。
「紫さんを雇ったのは妖魔じゃないかしら?」
「妖魔?」
「ですが五月さん、妖魔だとしても自分らでやるでしょう」
「でも、ここは結界の内にある場所。この前は妖魔の騎士団が入り込みましたけど、そんなのは少数派でやっぱりこ
こへの侵入は妖魔にとっては困難なんじゃないかしら?」
「で、半妖魔みたいな殺し屋を雇ったっていうんですかい?」
「考えられる事のひとつとしてね」
有理は湯のみをテーブルに叩きつけるように置いた。
「吸血鬼ならどっかの地下か墓場に寝込むだろ! 片っ端から探して心臓に杭でも打ち込んでやる!」
「だから、デイウォーカーは普通の吸血鬼とは違うんだって」
ロクが呆れ顔で言った。
「けど、スレイヤーは"攻め"の仕事だぜ! 襲撃を待つなんて性にあわねー!」
「だから居場所はわからねーんだよ」
「片っ端から探す!」
「アホ」
「アホってゆーやつが馬鹿だ!」
「なにーっ?」
睨み合う二人に五月が割って入った。
「……ちょっと、有理さんもロクさんも止めて」
「とめねえーでください、五月さん。今日と言う今日は……」
「このゴリラをケッチョンケチョンにしてやる……」
「心当たりがあるわ!」
「だからこのゴリラを……えっ? 五月さん、今なんて言ったの?」
「心当たりがあるのよ」
|