3、荒野に咲く白き花はB
二稿目



 物陰に隠れた有理はグロック17のカートリッジを交換していた。
「やるじゃねーか」
 女の方もサブマシンガンの弾を撃ち尽くしカートリッジの交換の最中だった。
「あんたもね」
「何であたしを狙う!」
「仕事」
「殺し屋か、てめえ」
「まあね」
「ふん! てめえの時給の足しにされてたまるか!」
 物陰から姿を現した有理は再び相手に撃ちまくった。あっという間に弾を撃ちつ尽くす。
「ちっ! 弾切れはえーんだよ!」
 再び物陰に身を隠した有理は弾倉の交換を始めた。
 その時、何かが有理の足元に落ちてきた。
 花?
 足元に落ちたのは白い百合だった。
「なんだこれ?」
 有理はそれを拾い上げた。
「気に入ったかい! 矢追有理! そいつは私が殺す相手に贈る手向けの花よ。遠慮なくもらってちょうだい!」
 女はサブマシンガンを放り投げるとコートに隠しもったブレードを抜いた。
「殺す相手にだって? なんかムカつくなぁ!」
 有理は白い花を投げ返した。
「そいつはお前に返してやてやるぜ!」
 こんどは女の足元に白い百合が転がった。女の口元から笑みが浮かぶ。
「おまえ! 名前は! 死ぬ前に聞いといてやるからよ」
 有理は相手に呼びかけた。
「私の名は紫!」
「変な名前」
「うるさいわね……私は気に入ってるんだからいいじゃない!」
 そう言うと紫はブレードを持って飛び出した!
「えっ!」
 紫は銃を向けた有理に近づいてくる。銃は手に持っていなかったが片手にはブレードだ。不審に思いながらも有理
は銃を構えて物陰から出た。
「なんだ? ヤケになったか?」
「ふん、弾遊びに少々、飽きただけよ」
「死にたいってのかよ?」
「どうかな……まあ、たまにそう思うことはあるけれど……」
 紫はにやりと笑うとブレードを振り上げ向かってきた!
「くっ!」
 何か隠し玉があるはずだ! でなければ特攻なんてありえねえ……
 有理は躊躇したが相手は剣だ。至近距離に近づかれたら危険なのは有理だった。迫る紫に有理はグロックの引き
金を引いた!
 銃弾が紫の身体を容赦なく撃ち抜く!
 よろめく紫は倒れ得そうになるのをなんとか踏んばった。黒い髪が前に垂れる。
 致命傷だ!
 有理は射撃を止め様子を見守った。しかし紫の行動は予想外のものだった。
「ふふふ……」
 紫は笑いながら身体をおこしていく。
「あら?」
 何事もなかったように黒く長い髪をかきあげた。
「ふ、不死身か? てめえ」
 紫は肩をすくめた。
「この、化け物女! 撃たれたら倒れろよ!」
 有理はさらに引き金を引いた。銃弾を受けても多少、身をよじるだけで紫は平気で突き進んでくる。
「なら……ここは」
 有理は額に狙いを定めた。それを察知した紫は、その場から飛び上がった。信じられない跳躍力だ。そして落下を
始めた時、ブレードを有理の頭上に向けた。
「ちっ!」
 有理は振り下ろされたブレードを名刀"虎鉄"の鞘で止めた!
「くっ!」
 有理は、紫の一撃を受けたまま、刀を引き抜き切りかかった。バック転で有理の剣捌きを避ける紫はロングコートを
翻して有理に目をくらました。
「こいつ!」
 それを振りほどくように刀を横に振ると紫の姿は消えていた。
「ちぃ! どこだ!」
 辺りを見渡す有理。紫の姿は見当たらなかった殺気だけは伝わってくる。
 殺る気満々ってわけかよ……
 有理は刀を構え、次の攻撃を待ち構えた。
 背後の砂が舞い上がる!
 そっちか!
 背後に刀を切りつける有理だったが紫のブレードの方が早かった!
 やばっ!
 有理は覚悟した。
 その時、何かの光が紫の目を眩ました!
 ブレードの軌道が微妙に逸れた。火花が散った! 有理の刀に弾き飛ばされたかたちになった紫はバランスを崩し
て着地した。
 再び光が紫の目を眩ます。
「くそっ!」
 紫はロングコートを翻すと高くジャンプした。とても人間の跳躍力と思えない高さだ。
「あっ! 待て!」
 崩れかけた建物に飛び移るとそのまま姿が見えなくなってしまった。
 光の元を見るとそこにはロクが十字架をかざして立っていた。
「えっ? 十字架〜ぁ?」


3、荒野に咲く白き花はC
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