3、荒野に咲く白き花はH
二稿目



―ストライカー本部13階―

「何しに来た? 矢追有理」
 闇の審問官は面倒くさそうにそう言った。
「何って、ちょっと訊ねごとをしに」
「お前の事は気に入っているが特に親しいわけでもないぞ。ちと厚かましくないか? それに後ろの2人はなんだ?」
 有理の後ろにいた紫と真田のばあさんは気まずそうにお辞儀をした。
「まあまあ、そんなケチ臭いこと言わないで」
「すんなり協力すると思うか?」
「分かってるよ。なんか珍しい物が代わりに欲しいんだろ? いやしい奴だよなぁ」
「な、なんだと」
「まあまあ」
 有理は後ろに隠してあった白い百合の花を差し出した。
「これじゃダメかな?」
「花?」
 闇の審問官は白百合を受け取ると興味深げに見た。
「この花は……」
「その花はね、ここにいる紫さんのばあちゃんへの想いが込められた貴重な花さ」
「むう……まあいい。今回だけだぞ」
「よかった! あんたには分かるんじゃないかと思った!」
「これは特別だ。で、何を知りたい」
 有理は紫に合図した。紫はうなずくと闇の審問官の前に出た。
「私をデイウォーカーに変えたヴァンパイアを探しております」
 そう言うと紫は深々と頭を下げた。後ろの方では真田のばあさんも一緒になって頭を下げている。
「前に出よ! ハーフヴァンパイアよ」
 闇の審問官のその言葉に紫はさらに一歩、前に出てひざまずいた。
「手を……」
 闇の審問官は差し出した紫の手を握った。しばらく沈黙が続いた後、闇の審問官は語りだした。
「……ここより、東に160kmほどのところに人間と妖魔が混在する街がある。そこの"最も高き場所の最も低き場所"
にそなたの探す者がおる」
 笑顔になる有理と真田のばあさん。それを見た紫もつられて笑顔になった。ごまかす為の笑いでも卑しい嘲笑ので
もない。心の底から込みあがる本当の笑顔だった。
 何年ぶりだろう……
「ん? でも"最も高き場所の最も低き場所"って? なんか謎々じゃね?」
「いいよ、有理。なんとなく心当たりがある」
 紫が立ち上がろうとした時だった。審問官は握った紫の手をひぱった。紫は何事かと振り向いて闇の審問官を見
た。黒い頭巾で隠した闇の審問官の顔が紫を見つめていた。
「デイウォーカーよ。そなたにもうひとつ進言しておく事がある」
 不思議そうな表情で審問官を見つめる紫は言葉を待った。
「止まぬ雨はない。そなたには身を濡らさぬ傘もある」
 そう言って闇の審問官は真田のばあさんと有理を指差した。
「……はい! 闇の審問官様!」
 笑顔でうなずくと紫は力強く立ち上がった。
「何、小声で話してたんだよ?」
 駆け寄る有理に最初会った時には考えられない表情で紫は言った。
「ふふふ……あんたの悪口よ」
「何! まじ?」
「うそ」
「えーっ! 何て言ってたんだよー! 気になるじゃん」
「内緒!」
「えーっ! ああ、闇のナントカさん! ありがとねーっ!」
 有理たちは審問室から出て行った。


「相変わらず騒がしい奴だ……」
 闇の審問官は貰った白い百合の花をくるくると回しながら有理たちを見送った。


3、荒野に咲く白き花はI
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