4、霊水山のゴーストストーリーD



 滝の水しぶきが虹を作っていた。
 美しい歌声が流れる。その声は滝の音にかき消されることもなく辺りに響いていた。言葉を解さぬ動物さえもそれに
は大人しく聞き入っていた。
 歌の主は宙に舞うと水の上に降りた。不思議なことに歌の主は沈まない。そのまま水の上を滑るように舞い踊っ
た。その日本舞踊にも似た舞は後ろで流れ落ちる滝に不思議と調和していた。
 
 周りの林から小鳥が一斉に飛び立った。
 滝の上に数人の人影が姿を現した。
 異様な甲冑を着込んだその者たちは隙間から黒い煙を噴出している。甲冑の中は黒い闇で表情は何も見えなかっ
たがその奥に潜む眼はじっと舞い踊る絽菊を見つめていた。
「美しいな……魔界では見られないものだ」
「この"重い鎧”越しでなければもっといいが」
「だがこれが無ければ我々は人間界の"魔氣"の薄い場所では動けない。特にこのような場所では」
「どうする?」
「捕らえよう。役に立つかもしれん」
 魔界の騎士たちは剣を抜いた。

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