|
「石井六輔三等陸尉」
その言葉にロクは何も答えなかった。
「君に仕事がある」
「出前はやってませんよ」
ロクは目をそらして洗い物を始めた。
「料理じゃない。君の前の仕事のことだ」
「とっくに足を洗いました。今は皿を洗ってる」
「西の町でトラブルがあった。街がひとつほぼ全滅だ」
「やらないっていってるでしょ」
織田司令官は布の切れ端をカウンターに放り投げた。それを見たロクは顔色を変えた。
「これは……」
SOG(自衛隊特殊作戦群)の徽章だった。
「見覚えあるだろ? お前の隊だ。犯人は彼らだよ」
「ありえません。SOGは妖魔の初めての掃討作戦の際、全滅してます」
「そいつは俺も知っている。だが、ちょいとおかしな事になっていてな。そいつをお前に調べてもらいたい。西の街にい
ってな。どうだ、ひさびさにスレイヤーの仕事をやってみんか? バックアップはする」
「そいつはお断りします。俺はスレイヤーから足を洗ったし今では居酒屋の店主だ。それに今俺は愛に生きてるんで
す」
「この件には甲賀三等陸佐が関わっている」
ロクの手が止まった。
「……甲賀三等陸佐は亡くなったはず」
「だが生き残りの者が証言がある」
「アホらしい」
「信じないのか?」
織田司令官は携帯電話を取り出した。
「今時、携帯電話なんて使えるんですか?」
ロクは片眉をしかめた。
「電話の機能はしていないが情報保存媒体としては随分役に立つんだ。放棄された携帯電話の店にごろごろしてい
るぞ」
画面に画像が映し出された。
「意外と画素もいいはずなんだが」
そこに映っていたのは見覚えのある戦闘服を着た男の姿だった。暗くて顔までははっきり見えていないがSOGの
隊員であることには違いなさそうだった。織田はボタン操作で画像をアップさせた。
「こいつは……」
左胸の徽章の下には"KOUGA"と記された刺繍が貼り付けてあった。
ロクの右の眉が釣りあがった。
「わかりました。店はしばらく休みます」
|