二稿目

「さつきさーんいるー?」
 そのころ有理とリーヴァは五月の家に弁当を持って来ていた。
「あら? 有理さんにリーちゃん。どうしたの?」
 有理は手に持った風呂敷の包みを取り出して見せた。
「ロクのやつが五月さんに弁当もってけっていうからさ。来ちゃいました」
「ロクさんが?」
「うん。五月さん、最近店に来ないから心配してたみたいよ。様子を見て来いって」
「……そう」
「五月さん、病気?」
 心配そうに五月の顔をのぞきこむ有理。
「ううん、違うわ。ただちょっと落ち込んでただけ」
「何かあった?」
「……大したことじゃないわ。それにしても随分、沢山ありそうね。一人じゃ食べ切れそうもないわ」
「いや、そうでもないぜ」
「そうよね、あなたたちも食べましょうよ」
「えっ! まじ」
「きっとロクさんもそのつもりなのよ」
「へへ、そうかな」
「毒見も済んでるんでしょ? 上がって一緒に食べましょ」
「な、なにを言ってんの? 五月さん」
「口の周りにフライのかすがついてるわ、二人とも」
「いっ?」
 有理とリーヴァは顔を見合すと慌てて口を拭いた。
「さっ、早く上がって。今、お茶を用意するわ」
 五月は笑顔を見せて有理を手招きした。だが有理にはそれが無理しているように見えていた。
 家に上がるとちゃぶ台の家に封を開けた手紙があるのに気がついた。
「珍しいね。今時、手紙なんて」
「えっ? ああ……これ。昔のよ。部屋を整理していたら見つけたの」
「ふーん。いいなー、手紙って」
「手紙が?」
「なんか開ける前にドキドキしない? 何が書いてあるんだろうとか」
「ふふふ、確かにそういう事のもあるかもね」
「あ! もしかしてラブレター」
「違うわよ。夫からよ」
「旦那さん……あっごめん……」
 有理は五月の夫が既に亡くなっていることを思い出した。五月と知り合った時は、すでに未亡人であったが時々聞
くロクからの話では随分、仲の良い夫婦だったようだ。手紙はその想い出の品であることは間違いなかった。
 そういえばロクが手紙がどうのって言ってたっけ……もーっ! あたしって無神経!
 有理は自分の軽率な質問に後悔した。
「いいのよ。もう大分経つのに吹っ切れてない私がだらしないのよ。ただ、この手紙……あの人が最後にここから出て
行く直前に書いたみたいでね。見つけたのは最近なんだけど、なんだかあの時のことが昨日のことみたいに思い出
されちゃって……それでヘコんでたってわけ」
「そう……でもさ。もう昔の事だし、旦那さんはもういないから……あっ! また…ゴメンナサイ」
「いいよ。有理さんの言うとおり。あの人はもういない。私って馬鹿みたい。出せない返事まで書いたりして……もう、
彼は、いないっていうのにね……」
 五月の目に涙が溜まる。有理は慌てて弁当をちゃぶ台の上に置いた。
「さ、さあー! 早く食べようぜ! あのゴリラの作ったゴリラフライ結構、いけるんだよ。五月さん!」
 リーヴァも五月のお尻を押してちゃぶ台に向かわせる。
「あらあら、りーちゃんってば」
 静かだった甲賀家の食卓が急に騒がしくなっていった。 


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