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野次馬の間をぬって二人の刑事が現場に行こうとしていた。
一人は腹についた肉を隠すこともしない中年男。手に持ったホットドッグからこぼれ落ちたケ
チャップが上着についたが全く気にしない様子だった。その相棒は若い女でスリムで敏捷そう だ。男とは全く正反対だ。その顔立ちはアジア系の血が混じっているらしく黒髪と瞳が印象的 だった。
「おい! 通してくれ。警察だ」
ホットドッグを持った手を上げて野次馬に群れを掻き分ける。その後を女が追った。やっとの
事で抜け出すと先に来ていた殺人課の刑事が彼らに気付き手を上げた。
「おい! こっちだ」
二人は手を上げる刑事のところに向かった。
「遅かったな。もう引き上げようかと思っていたぜ」
殺人課の刑事たちは既に"仕事"は終えたらしくゴム手袋を外しながらそう言った。
「混んでたのよ。なんたってクリスマスシーズン」
黒髪の女刑事はにっこりと笑い小さく肩をすくめた。
「あたし達麻薬課を呼ぶってことは何か見つけたの?」
「そういうことだ、ステイシー。まあ、こっちへ来てみろよ」
そう言って殺人課の刑事は現場ともいえる放置されていた黒いセダンに向かって歩き出し
た。ドアは開きっぱなしで鑑識課はまだ現場写真を撮影していた。
「被害者は?」
ホットドッグを頬張りながら中年の刑事が尋ねた。
「あの中さ。おい、それ旨そうじゃないか? エディ」
「やらんぞ。こいつは俺のだ。で、被害者の身元は?」
「ああ、免許を持ってた。ケニー・グレシーニ」
「グレシーニ?」ステイシーとエディは顔を見合わせた。
「知ってるのか?」
「ああ、マフィアでワイズガイ。前科も言う事なしの悪党さ」エディが吐き捨てるように言った。
「大量の麻薬を扱ってるから前から追ってたんだよ。くそ!」
ステイシーが車の中の死体を覗き込んだ。
「頭に一発……両肩も撃たれたみたいね」
「両膝もだ。それに腹のあたりに一発。念の入ったこった。抗争か?」
「そんな情報は入ってないけど……」
「そうか」
「何か気になることでも?」
「まあな」殺人課の刑事は救急車を指差した。ビニール製の死体袋を救急隊員が運び込んで
いた。
「他にも用心棒たちが二人殺されてるんだが頭に一発づつで倒している。いい腕だよ。ところ
がこの男には両肩に一発ずつ。さらに両膝そして腹。最後に頭だ。まるで拷問だな」
「どういうこと?」
「"処刑"だよ。こいつは」
ステイシーは死体を見つめた。
一体、彼は最後に何を見たのだろう……
「組織の制裁か、抗争か……そいつはまだわからんが、あんたら何か知ってないかな?」
「さっきも言ったけどそういうネタは入ってきてないわよ。調べてみるけど」
「そうか……ところであんたたち麻薬課を呼んだのはその死体の事じゃないんだ。ちょっと見て
くれよ」
殺人課の刑事は後部座席を指差した。座席シートは大きく切り裂かれている。
「なにこれ?」
「よく見てみろ」
ステイシーが覗き込むとシートの中にあるはずのスプリングはなく空洞になっていた。そして
中に散らばる見覚えのある白い粉だ。
「コカイン?」
「ビンゴ」
「このスペースだと……随分な量になるわね」
「そうだな。俺たちが来た時にはもうこんな状態だった。多分、襲撃者が持ち去ったんだ」
エディも車の中を覗き込む。
「こっちはわたしたちの仕事ね。情報が入ったらそっちにも廻すわ」
「じゃあ、こっちも何かわかったら知らせるよ。しかしクリスマスだってのに厄介な事件になりそ
うだな。クリスマス休暇は今年も無しだ」
「あら、あんたがクリスマス休暇したことがあった?」
殺人課の刑事は肩を竦めた。
「あるよ。ヤンキース対カージナルスの試合」
「野球の試合? クリスマスじゃないでしょ?」
ステイシーは眉をひそめた。
「ワールドシリーズが俺のクリスマス休暇なのさ」
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